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♪ #37: よぞらのうた / アクアマリン
昨日は久しぶりにオフの日曜日だというのに、朝から最悪の気分でした。
後藤氏のニュースに非常に心がざわついてばかりです。
東日本大震災のときと似たような心中です。
正直な話、狂信的で理屈が通じる相手でないだけに、
こういう結末は避けられないかもしれないとは感じていましたが、
いざ本当にこういった事態になってしまうと、本当にやりきれない思いでいっぱいです。
というか、実は水面下で何か話が進んでいるのでは?という希望も捨てきれずにいたのですが。
「ああいう状況なのはわかっていて行くなんて自業自得だ!」
なんて声高に叫んでいる人も世の中にはいるのでしょうが、
ジャーナリストとして動いてくれる人がいるからこそ
僕らはそこで何が起きているかを一端でも知ることができ、
問題意識を持つことができ、平和な今の日本に感謝できるのです。
シリア国内でもヨルダン国内でも、みんな口を揃えて失意の声を漏らしていたことからも
彼が現地でどのような活動をしてきたのかが窺い知れるというものです。
もちろん僕は湯川氏とも後藤氏とも知り合いでもなんでもないですし、
即ちニュースで報じられていることからしか事態を推し量ることはできないですが、
後藤氏がああいった結末になってしまったことは非常に理解できません。
いよいよISに対して強い憤りが爆発しそうです。
この事態が終結を迎えた暁には、ISの連中を一人残らず同じ目に遭わせてやりたい。。。
そんな短絡的、感情的な考えしか出てこない自分の未熟さが情けないです。
残忍な結果と、そこから生まれる憎悪よりも、
後藤氏の紡いできた言葉や使命感に目を向けようと言われてるけど、
今のおれには無理。そこまで人間ができてません。
広島で生まれた人間としては、戦争になってしまうことには非常に胸中複雑なのですが……
ともあれ、湯川氏と後藤氏のご冥福をお祈りします。
願わくば、禍々しいあの1分の動画でなく、
彼が紛争地域で活動していた姿を映した映像が
全世界の人々に届き、いつまでもみんなの心に残り続けてほしいものです。
――――――――――――――――――――――――
さあ、頑張って気を取り直しましょう。
2015年度課題曲のフルスコア集とCDが日曜日に無事に届きました。
巨大掲示板では
「今年もつまらないな」とか
「全部ハズレ」とか
まあ毎年毎年飽きもせずにおんなじことばっかり吹いて回ってる連中がいますが、
あそこは基本的に「変わった曲、小難しい曲を評価する俺カッケー」とか思っちゃってる人間の吹き溜まりなんで、
言ってることの是非はどうあれ無視するのが吉です。
あんなところ覗いても何も生まれません。
ということで僕の全体の印象ですが、
ここ数年の水準から俯瞰すると、まあ横ばいといったところですかね。
でも、少なくとも去年よりは全然いいと思います。
マーチは去年のⅣよりはいずれもいいと思うし、
委嘱枠の曲も、祈りの旅はさすがに超えないけど、ここ10年の委嘱曲の中では個人的に一番好きです。
それでは、まだ5回ずつくらいしか聴いてないですが、偉そうにファーストインプレをば。。。
Ⅰ: 天空の旅 ―吹奏楽のための譚詩― (石原勇太郎)
前回記事で、「スウェアリンジェンっぽい」と書きました。
そして、そう感じる要因の一つに、「3+3+2」のリズムパターンにある、とも。
試聴の時は聴けなかった1分以降に「タタッタタタッタ」のリズムパターンも登場して、
いよいよスウェアリンジェンぽさが濃厚です。
『アヴェンテュラ』とか『誇りと祝典』とかに出てくるヤツね。
断っておきますが、決してこの曲をパクリだとか、貶めているとかいうわけではありません。
余談ですが、俺が特定の作曲家に初めて興味持ったのがスウェアリンジェンだったんです。
中学校の時に、最初期の作品集を借りて来たんですよね。
「中学生がやる曲しかない」なんてのたまう人もいますが、
そういう頭でっかちな人は、C.T.スミスとかだけ聴いて、
(高尚かもしれないけど)狭い世界で過ごしてればいいと思うんです。
ちなみにスウェアリンジェンの曲で一番好きなのは、『1730年冬: 川の旅』です。
『栄光の全てに』とか『狂詩曲ノヴェナ』あたりもいいですね。
さて、スウェアリンジェンぽいと散々言ってますが、
先日シモフリさんと話した際に、彼は「コープランドっぽい」と述べておりました。
かなーり乱暴にこれらをまとめますと、つまりは「アメリカっぽい」となるのでしょうか。
補足しますと、「ひと昔前のアメリカの作曲家の作風っぽい」かな。
この曲聴いて、ちょっと80年代の課題曲の匂いがするなと感じたんですよね。
『インヴェンション』とか『シンフォニエッタ』とか、あのあたり。
俺が昔、初めてインヴェンション聴いたときに、何故だか「アメリカっぽい」と感じたんですよ。漠然とですけど。
テンポが速くなってからの部分が特にね。
中間部に向かって落ち着いていくちょっと前に訪れるヤマの部分で、
後ろでシロホンとハイウッドが細かく動き回ってるんですけど、
それ聴いたとき、初めてスウェアリンジェンの曲聴いた記憶がフラッシュバックしたんですよ。
なんだかわかりづらい話になってきました。
これ以上書くと余計こんがらがりそうなので、
アメリカっぽく昔の課題曲っぽくもあるという話はここまで。
非常に躍動感のあるリズムパートに反して、
旋律は、オブリガード含めて全体にスラー中心の大きなフレーズという対比構造。
練習番号Eのコラールの変容という部分がこの曲の一番のヤマとなるフレーズでしょうか。
壮大さを感じさせてくれます。これは好きです。
ここでボンゴが出てくるけど、こういう毛色の曲では比較的珍しい使い方のように感じます。
中間部はソロが繋いでいくような構造の祈りのフレーズ。
フルート結構音域低いなぁ。これは周りが相当気遣わないといけなさそう。
でもこの中間部の旋律始め雰囲気は結構好きです。
あと弦バスに目立つ箇所がちょこちょこあって、しかもちゃんと必然性のある目立ち方なのが嬉しい。
これは絶対代用とかせずになんとか弦バスオンリーで聴かせたいですね。
そして練習番号I、中間部のヤマの部分。
話蒸し返すようで悪いのですが、
ここはスウェアリンジェンの『マジェスティア』の中間部が頭をよぎりました。
全編渡ってアメリカチックです。
後半、もっとなにか「さすが朝日賞!」といった展開を見せてくれればよかったんだけど、
ほとんど展開らしい展開がなく、ちょっと拍子抜けしてしまいました。
曲のラスト、冒頭のファンファーレのフレーズを低音から繋いでいく部分でも
もう少し何かあると印象がよかったかなぁ。
ただ並列的に音域をあげているだけなので、
基本的に疾走感のある曲の最後で若干冗長な印象を受けてしまったのが残念。
ラッパ的には、結構激しい跳躍が多くて嫌らしいです。
しかも跳躍して上がる前の低い音が跳ねて詰まった後の16分音符という(「タッタ↓ター↑」の形)パターンが多くて、
吹く前から、指揮者につつかれまくるポイントなのが確定的です。
朝日作曲賞受賞という冠がついてるとどうしても小粒な印象は否めないけど、
試聴の段階で感じていた不安は結構消えました。
朝日賞でない入選作として選ばれていたら、より水準の出来だと感じていただろうなと思います。
個人的には上記のとおり80年代課題曲の匂いがしてちょっと嬉しい。
生まれてないけど懐かしい、みたいな。
でもやっぱりエッセイ読んでから聴くと、曲の雰囲気にどこか違和感を感じるんですよね。
快速部はちょっとイメージと違うかなぁと。
Ⅱ: マーチ「春の道を歩こう」 (佐藤邦宏)
うーーーん。。。
試聴できるあたりまでは普通の課題曲マーチながらも割と嫌いじゃなかったんですけども。
Trio以降が、なんというかスッキリしないなぁ。
空気がフワフワしてる、終止はしてるんだけど向かうところが安定しないような。
やや投げやりに曲が進んでいくようでやるせない。
ブリッジも、ありがちなパターンをパッチワークしたようで一貫性が見えません。
極め付きはラスト。
それまでの展開からすると明らかに唐突な印象。
別にそれ以前の部分で印象的に呈示されたわけでもないフレーズが
それまでの流れをぶった切って現われ、そのままなし崩し的に終結へと向かうのですが、
なんか消化不良といった感じで、言ってしまえば勿体ないんですよねぇ。
冒頭微妙だけど最後はすごいいい終り方する曲と
冒頭すごいいい始まり方だけど最後微妙な終り方する曲だと、
前者のほうが得てして印象はだいぶいいものです。
こうしてみると前半がかなり良作に思えます。
なんとも勿体ない。。。
Ⅲ: 秘儀Ⅲ ―旋回舞踊のためのヘテロフォニー (西村朗)
なんか久しぶりに市音のバリバリ音のバストロ聴いた気がする。
2004年の参考音源とかすげぇバリバリいってましたよね。
でも当時バリバリ言わせてた篠崎さん今もういないのね。。。
ということで、今年の委嘱枠なワケですが、
西村さん、一切手加減ナシです。容赦ナシ。
3拍子ですが、いわゆる「in one」の拍感で進み、
アクセントが1拍目にきたり2拍目にきたりするので
慣れるまでは拍子感を捉えにくく感じるかもしれません。
瞬間瞬間でそのときどこが主旋律に該当するのかという概念がなく
あるパートの奏しているフレーズの隙間を縫うように別のパートがフーガ的に登場し、
それらが立体的に複雑な階層構造を構築していきます。
特筆すべきは、委嘱枠の曲は総じてパーカスがヒマなことが多いのですが、
この曲は忙しいです。
オスティナートとまでは言いませんが、冒頭から基本的に出ずっぱりです。
そしてなんと言ってもティンパニ。
中盤過ぎたあたりからとんでもないことになってます。
ファイブリングスを髣髴とさせる乱れ打ち気味の楽譜です。
課題曲としての教育的配慮を考えたときにどうなのよ、というようなヒマな譜面よりはいいでしょうが、
これはこれでなかなかえげつないです。
課題曲という枠組みを超えて、非常に芸術的価値が高そうな曲で、
スコアの読みごたえもあります。読めば読むほど…なスルメ風味です。
ちなみにうちの指揮者はこの曲に興味津々でした。
強いて不安な要素を挙げるならば、ちゃんと鳴るのかなぁと。
音がぶつかるってことは、半音階がわんさか出てくるわけで、
普段吹きなれてるB-durとかの聴こえ方とあからさまに剥離した音になってしまうとやっぱり効果薄いですし。
あと、楽器始めたばっかりの中学生とかに吹かせるのは
難易度とは違う問題でやっぱりちょっと酷というか、怖さがありますね。
なんというか感覚がきっちり備わる前にこんな曲延々練習させて大丈夫かなぁと。
あー……そういえば問題のピッチの違うチャイニーズゴング2つ。
何かで代用できるのかと思いましたが、これは完全に無理ですね。
ライナーノーツの特記事項で、叩いた後に音程が上がるものと下がるものを1つずつ用意するように指示があり、
曲中で使用される部分でも、かなり目立つ形で印象的に使われてます。
調べたら1つ6000~8000円くらいで購入できるようなので、
よっぽどの団体を除けばこの曲のために買える範囲の値段なのかなという気もします。
無駄にしないためにも、この曲やったら今度はトゥーランドットやるのは既定路線ですかね。。。
Ⅳ: マーチ「プロヴァンスの風」 (田坂直樹)
「スペイン→プロヴァンス→スペイン」と吹く風の旅。
試聴の段階で前半のスペイン調の箇所は概ね聴けました。
久しぶりに課題曲に登場した短調のマーチにワクワクしながらも、
割と作曲者が表現しやすく、かつそれが聴き手にも伝わりやすい「スペインぽさ」に対し、
Trioからの「プロヴァンスぽさ」はどう表現するんだろう、なんて気になってました。
聴いてみましたが、なんかそれっぽく聴こえます。おお~!
や、具体的に「こういう和声進行がプロヴァンスを想起させる要因だ」なんてのはないんですが。
推測するに、旋律の特色とかではなく、
この曲のTrioって所謂マーチらしいリズムがほぼないも同然で、
それが全体を横方向への大きなフレーズ感の中に取り込んでしまうファクターになっていると思うのです。
(例を挙げると、97年の方の『ライジング・サン』のTrioの前半が近いかな)
個人的なイメージで恐縮なのですが、
僕の中でのプロヴァンス……というか地中海沿岸の南欧に対するイメージって「バカンス」なんですよ。
日本みたいなジメッとしてうだるような暑さの夏ではなく、
あくまでドライでカラッとした地中海沿岸特有の夏の訪れ。
夏を待ち侘びた人々は気心知れた家族や友人と一斉にリゾートへ繰り出す。
立ち並ぶ家々の真っ白な壁(これはアドリア海沿岸か)がよく映える抜けるような青空と陽光。
その中にあって人は、何かに追われるようにセコセコ働き詰めるなんて罪悪だと言わんばかりに
只管のんびりと体を休め、世間の喧噪から隔離された空間を満喫する――。
見ようによっては偏見なのですが、これらは全てプラス感情のイメージです。
僕の中の憧れを投影していると言ってもいいかもしれません。
こういったイメージそのままに
細々しいリズムがバックに流れることもなく、
のびやかなハーモニーとその上で歌われる旋律が
南欧らしい安寧でのどかな温かみを感じさせてくれるのかなと。
課題曲マーチ定番のピッコロソロも、
極力16分音符を使わず、軽やかになりすぎずという気の遣いようが見えて、
同じような他のマーチとしっかり差別化できてます。
で、ブリッジ。ここはスペインですね。
のどかな風景が突如一変。
「トレロカモミロ」の前奏を髣髴とさせる3連符ファンファーレです。
ブリッジ後のTrio再現部はリズミックですが、
これはもうスペインに向けて帰っていると解釈すればいいでしょう。
再現部後半から、スネアが『ブルースカイ』や『エンターテインメント・マーチ』でも出てきた
裏拍でロールするパターンのリズムになってますが、
これはあんまり流行らないほうがスネア奏者的によいのかな。難しいよ。
そして最後は冒頭のテーマを再現して歯切れよく終わります。
第1テーマの旋律が、音符が詰まってるところと空いてるところが極端なので
縦の線揃えるのになかなか厄介な匂いがします。
でも、近年のアマチュア作のマーチの中ではかなり好きな部類です。
ところで、今年はどの曲も結構跳躍が激しい気がするんですが。
『トランペットが一番苦手としていることは「跳躍」』とプロのラッパ奏者も認めてるほどなので(『オーケストラ楽器別人間学』参照)、
ラッパ奏者の皆さん、今年は例年より特訓の夏になりそうですね。
Ⅴ: 暁闇の宴 (朴守賢)
やっぱりこの手の曲は、実際にスコア見ながら聴くに限ります。
試聴の段階では暗闇を手探りで歩くような感覚で聴いていたのに、
スコア見ながらだと楽器同士の絡みの妙や、瞬間瞬間で湧き起ったり消えたりするダイナミクスの波や音楽的ゆらぎ、
そういった情報が少しずつでも入ってくるので
途端に視界が開けてきて、曲の全体像も靄がかかっていながらもうっすら見えてきます。
単刀直入に言って、僕この曲結構好きですし、音楽的内容もとても優れた作品だと思います。
それでいて、課題曲Ⅴとしてはかなりとっつきやすい部類なのではないでしょうか。
難易度もそこまで高いわけではないように思いますし、曲想も理解しやすいでしょう。
総合的に見て課題曲としてかなり理想的な曲だと思っています。
僕的には、練習番号Eからすごく楽しくなってきました。
Iからが特にいいですね。夢想してるようなちょっと不思議な雰囲気が何とも言えず、
本来の意味でエクスタシー状態になれるような錯覚を受けます。
最終盤に現れる、井澗昌樹もビックリの荒ぶるチューブラーベルは見もの(聴きもの?)
さすがにこういう曲は数回見ただけではまだまだ語れません。
時間をかけてしっかり楽しもうと思います。
ところでライナーノーツにもありましたが、
フェルマータの三角バージョンみたいなのと四角バージョンみたいなの。
一般的な半円のフェルマータもちゃんと出てきますが、
これら3つはどうやって使い分ければいいんだろ。
不勉強で恐縮です。
昨日は久しぶりにオフの日曜日だというのに、朝から最悪の気分でした。
後藤氏のニュースに非常に心がざわついてばかりです。
東日本大震災のときと似たような心中です。
正直な話、狂信的で理屈が通じる相手でないだけに、
こういう結末は避けられないかもしれないとは感じていましたが、
いざ本当にこういった事態になってしまうと、本当にやりきれない思いでいっぱいです。
というか、実は水面下で何か話が進んでいるのでは?という希望も捨てきれずにいたのですが。
「ああいう状況なのはわかっていて行くなんて自業自得だ!」
なんて声高に叫んでいる人も世の中にはいるのでしょうが、
ジャーナリストとして動いてくれる人がいるからこそ
僕らはそこで何が起きているかを一端でも知ることができ、
問題意識を持つことができ、平和な今の日本に感謝できるのです。
シリア国内でもヨルダン国内でも、みんな口を揃えて失意の声を漏らしていたことからも
彼が現地でどのような活動をしてきたのかが窺い知れるというものです。
もちろん僕は湯川氏とも後藤氏とも知り合いでもなんでもないですし、
即ちニュースで報じられていることからしか事態を推し量ることはできないですが、
後藤氏がああいった結末になってしまったことは非常に理解できません。
いよいよISに対して強い憤りが爆発しそうです。
この事態が終結を迎えた暁には、ISの連中を一人残らず同じ目に遭わせてやりたい。。。
そんな短絡的、感情的な考えしか出てこない自分の未熟さが情けないです。
残忍な結果と、そこから生まれる憎悪よりも、
後藤氏の紡いできた言葉や使命感に目を向けようと言われてるけど、
今のおれには無理。そこまで人間ができてません。
広島で生まれた人間としては、戦争になってしまうことには非常に胸中複雑なのですが……
ともあれ、湯川氏と後藤氏のご冥福をお祈りします。
願わくば、禍々しいあの1分の動画でなく、
彼が紛争地域で活動していた姿を映した映像が
全世界の人々に届き、いつまでもみんなの心に残り続けてほしいものです。
――――――――――――――――――――――――
さあ、頑張って気を取り直しましょう。
2015年度課題曲のフルスコア集とCDが日曜日に無事に届きました。
巨大掲示板では
「今年もつまらないな」とか
「全部ハズレ」とか
まあ毎年毎年飽きもせずにおんなじことばっかり吹いて回ってる連中がいますが、
あそこは基本的に「変わった曲、小難しい曲を評価する俺カッケー」とか思っちゃってる人間の吹き溜まりなんで、
言ってることの是非はどうあれ無視するのが吉です。
あんなところ覗いても何も生まれません。
ということで僕の全体の印象ですが、
ここ数年の水準から俯瞰すると、まあ横ばいといったところですかね。
でも、少なくとも去年よりは全然いいと思います。
マーチは去年のⅣよりはいずれもいいと思うし、
委嘱枠の曲も、祈りの旅はさすがに超えないけど、ここ10年の委嘱曲の中では個人的に一番好きです。
それでは、まだ5回ずつくらいしか聴いてないですが、偉そうにファーストインプレをば。。。
Ⅰ: 天空の旅 ―吹奏楽のための譚詩― (石原勇太郎)
前回記事で、「スウェアリンジェンっぽい」と書きました。
そして、そう感じる要因の一つに、「3+3+2」のリズムパターンにある、とも。
試聴の時は聴けなかった1分以降に「タタッタタタッタ」のリズムパターンも登場して、
いよいよスウェアリンジェンぽさが濃厚です。
『アヴェンテュラ』とか『誇りと祝典』とかに出てくるヤツね。
断っておきますが、決してこの曲をパクリだとか、貶めているとかいうわけではありません。
余談ですが、俺が特定の作曲家に初めて興味持ったのがスウェアリンジェンだったんです。
中学校の時に、最初期の作品集を借りて来たんですよね。
「中学生がやる曲しかない」なんてのたまう人もいますが、
そういう頭でっかちな人は、C.T.スミスとかだけ聴いて、
(高尚かもしれないけど)狭い世界で過ごしてればいいと思うんです。
ちなみにスウェアリンジェンの曲で一番好きなのは、『1730年冬: 川の旅』です。
『栄光の全てに』とか『狂詩曲ノヴェナ』あたりもいいですね。
さて、スウェアリンジェンぽいと散々言ってますが、
先日シモフリさんと話した際に、彼は「コープランドっぽい」と述べておりました。
かなーり乱暴にこれらをまとめますと、つまりは「アメリカっぽい」となるのでしょうか。
補足しますと、「ひと昔前のアメリカの作曲家の作風っぽい」かな。
この曲聴いて、ちょっと80年代の課題曲の匂いがするなと感じたんですよね。
『インヴェンション』とか『シンフォニエッタ』とか、あのあたり。
俺が昔、初めてインヴェンション聴いたときに、何故だか「アメリカっぽい」と感じたんですよ。漠然とですけど。
テンポが速くなってからの部分が特にね。
中間部に向かって落ち着いていくちょっと前に訪れるヤマの部分で、
後ろでシロホンとハイウッドが細かく動き回ってるんですけど、
それ聴いたとき、初めてスウェアリンジェンの曲聴いた記憶がフラッシュバックしたんですよ。
なんだかわかりづらい話になってきました。
これ以上書くと余計こんがらがりそうなので、
アメリカっぽく昔の課題曲っぽくもあるという話はここまで。
非常に躍動感のあるリズムパートに反して、
旋律は、オブリガード含めて全体にスラー中心の大きなフレーズという対比構造。
練習番号Eのコラールの変容という部分がこの曲の一番のヤマとなるフレーズでしょうか。
壮大さを感じさせてくれます。これは好きです。
ここでボンゴが出てくるけど、こういう毛色の曲では比較的珍しい使い方のように感じます。
中間部はソロが繋いでいくような構造の祈りのフレーズ。
フルート結構音域低いなぁ。これは周りが相当気遣わないといけなさそう。
でもこの中間部の旋律始め雰囲気は結構好きです。
あと弦バスに目立つ箇所がちょこちょこあって、しかもちゃんと必然性のある目立ち方なのが嬉しい。
これは絶対代用とかせずになんとか弦バスオンリーで聴かせたいですね。
そして練習番号I、中間部のヤマの部分。
話蒸し返すようで悪いのですが、
ここはスウェアリンジェンの『マジェスティア』の中間部が頭をよぎりました。
全編渡ってアメリカチックです。
後半、もっとなにか「さすが朝日賞!」といった展開を見せてくれればよかったんだけど、
ほとんど展開らしい展開がなく、ちょっと拍子抜けしてしまいました。
曲のラスト、冒頭のファンファーレのフレーズを低音から繋いでいく部分でも
もう少し何かあると印象がよかったかなぁ。
ただ並列的に音域をあげているだけなので、
基本的に疾走感のある曲の最後で若干冗長な印象を受けてしまったのが残念。
ラッパ的には、結構激しい跳躍が多くて嫌らしいです。
しかも跳躍して上がる前の低い音が跳ねて詰まった後の16分音符という(「タッタ↓ター↑」の形)パターンが多くて、
吹く前から、指揮者につつかれまくるポイントなのが確定的です。
朝日作曲賞受賞という冠がついてるとどうしても小粒な印象は否めないけど、
試聴の段階で感じていた不安は結構消えました。
朝日賞でない入選作として選ばれていたら、より水準の出来だと感じていただろうなと思います。
個人的には上記のとおり80年代課題曲の匂いがしてちょっと嬉しい。
生まれてないけど懐かしい、みたいな。
でもやっぱりエッセイ読んでから聴くと、曲の雰囲気にどこか違和感を感じるんですよね。
快速部はちょっとイメージと違うかなぁと。
Ⅱ: マーチ「春の道を歩こう」 (佐藤邦宏)
うーーーん。。。
試聴できるあたりまでは普通の課題曲マーチながらも割と嫌いじゃなかったんですけども。
Trio以降が、なんというかスッキリしないなぁ。
空気がフワフワしてる、終止はしてるんだけど向かうところが安定しないような。
やや投げやりに曲が進んでいくようでやるせない。
ブリッジも、ありがちなパターンをパッチワークしたようで一貫性が見えません。
極め付きはラスト。
それまでの展開からすると明らかに唐突な印象。
別にそれ以前の部分で印象的に呈示されたわけでもないフレーズが
それまでの流れをぶった切って現われ、そのままなし崩し的に終結へと向かうのですが、
なんか消化不良といった感じで、言ってしまえば勿体ないんですよねぇ。
冒頭微妙だけど最後はすごいいい終り方する曲と
冒頭すごいいい始まり方だけど最後微妙な終り方する曲だと、
前者のほうが得てして印象はだいぶいいものです。
こうしてみると前半がかなり良作に思えます。
なんとも勿体ない。。。
Ⅲ: 秘儀Ⅲ ―旋回舞踊のためのヘテロフォニー (西村朗)
なんか久しぶりに市音のバリバリ音のバストロ聴いた気がする。
2004年の参考音源とかすげぇバリバリいってましたよね。
でも当時バリバリ言わせてた篠崎さん今もういないのね。。。
ということで、今年の委嘱枠なワケですが、
西村さん、一切手加減ナシです。容赦ナシ。
3拍子ですが、いわゆる「in one」の拍感で進み、
アクセントが1拍目にきたり2拍目にきたりするので
慣れるまでは拍子感を捉えにくく感じるかもしれません。
瞬間瞬間でそのときどこが主旋律に該当するのかという概念がなく
あるパートの奏しているフレーズの隙間を縫うように別のパートがフーガ的に登場し、
それらが立体的に複雑な階層構造を構築していきます。
特筆すべきは、委嘱枠の曲は総じてパーカスがヒマなことが多いのですが、
この曲は忙しいです。
オスティナートとまでは言いませんが、冒頭から基本的に出ずっぱりです。
そしてなんと言ってもティンパニ。
中盤過ぎたあたりからとんでもないことになってます。
ファイブリングスを髣髴とさせる乱れ打ち気味の楽譜です。
課題曲としての教育的配慮を考えたときにどうなのよ、というようなヒマな譜面よりはいいでしょうが、
これはこれでなかなかえげつないです。
課題曲という枠組みを超えて、非常に芸術的価値が高そうな曲で、
スコアの読みごたえもあります。読めば読むほど…なスルメ風味です。
ちなみにうちの指揮者はこの曲に興味津々でした。
強いて不安な要素を挙げるならば、ちゃんと鳴るのかなぁと。
音がぶつかるってことは、半音階がわんさか出てくるわけで、
普段吹きなれてるB-durとかの聴こえ方とあからさまに剥離した音になってしまうとやっぱり効果薄いですし。
あと、楽器始めたばっかりの中学生とかに吹かせるのは
難易度とは違う問題でやっぱりちょっと酷というか、怖さがありますね。
なんというか感覚がきっちり備わる前にこんな曲延々練習させて大丈夫かなぁと。
あー……そういえば問題のピッチの違うチャイニーズゴング2つ。
何かで代用できるのかと思いましたが、これは完全に無理ですね。
ライナーノーツの特記事項で、叩いた後に音程が上がるものと下がるものを1つずつ用意するように指示があり、
曲中で使用される部分でも、かなり目立つ形で印象的に使われてます。
調べたら1つ6000~8000円くらいで購入できるようなので、
よっぽどの団体を除けばこの曲のために買える範囲の値段なのかなという気もします。
無駄にしないためにも、この曲やったら今度はトゥーランドットやるのは既定路線ですかね。。。
Ⅳ: マーチ「プロヴァンスの風」 (田坂直樹)
「スペイン→プロヴァンス→スペイン」と吹く風の旅。
試聴の段階で前半のスペイン調の箇所は概ね聴けました。
久しぶりに課題曲に登場した短調のマーチにワクワクしながらも、
割と作曲者が表現しやすく、かつそれが聴き手にも伝わりやすい「スペインぽさ」に対し、
Trioからの「プロヴァンスぽさ」はどう表現するんだろう、なんて気になってました。
聴いてみましたが、なんかそれっぽく聴こえます。おお~!
や、具体的に「こういう和声進行がプロヴァンスを想起させる要因だ」なんてのはないんですが。
推測するに、旋律の特色とかではなく、
この曲のTrioって所謂マーチらしいリズムがほぼないも同然で、
それが全体を横方向への大きなフレーズ感の中に取り込んでしまうファクターになっていると思うのです。
(例を挙げると、97年の方の『ライジング・サン』のTrioの前半が近いかな)
個人的なイメージで恐縮なのですが、
僕の中でのプロヴァンス……というか地中海沿岸の南欧に対するイメージって「バカンス」なんですよ。
日本みたいなジメッとしてうだるような暑さの夏ではなく、
あくまでドライでカラッとした地中海沿岸特有の夏の訪れ。
夏を待ち侘びた人々は気心知れた家族や友人と一斉にリゾートへ繰り出す。
立ち並ぶ家々の真っ白な壁(これはアドリア海沿岸か)がよく映える抜けるような青空と陽光。
その中にあって人は、何かに追われるようにセコセコ働き詰めるなんて罪悪だと言わんばかりに
只管のんびりと体を休め、世間の喧噪から隔離された空間を満喫する――。
見ようによっては偏見なのですが、これらは全てプラス感情のイメージです。
僕の中の憧れを投影していると言ってもいいかもしれません。
こういったイメージそのままに
細々しいリズムがバックに流れることもなく、
のびやかなハーモニーとその上で歌われる旋律が
南欧らしい安寧でのどかな温かみを感じさせてくれるのかなと。
課題曲マーチ定番のピッコロソロも、
極力16分音符を使わず、軽やかになりすぎずという気の遣いようが見えて、
同じような他のマーチとしっかり差別化できてます。
で、ブリッジ。ここはスペインですね。
のどかな風景が突如一変。
「トレロカモミロ」の前奏を髣髴とさせる3連符ファンファーレです。
ブリッジ後のTrio再現部はリズミックですが、
これはもうスペインに向けて帰っていると解釈すればいいでしょう。
再現部後半から、スネアが『ブルースカイ』や『エンターテインメント・マーチ』でも出てきた
裏拍でロールするパターンのリズムになってますが、
これはあんまり流行らないほうがスネア奏者的によいのかな。難しいよ。
そして最後は冒頭のテーマを再現して歯切れよく終わります。
第1テーマの旋律が、音符が詰まってるところと空いてるところが極端なので
縦の線揃えるのになかなか厄介な匂いがします。
でも、近年のアマチュア作のマーチの中ではかなり好きな部類です。
ところで、今年はどの曲も結構跳躍が激しい気がするんですが。
『トランペットが一番苦手としていることは「跳躍」』とプロのラッパ奏者も認めてるほどなので(『オーケストラ楽器別人間学』参照)、
ラッパ奏者の皆さん、今年は例年より特訓の夏になりそうですね。
Ⅴ: 暁闇の宴 (朴守賢)
やっぱりこの手の曲は、実際にスコア見ながら聴くに限ります。
試聴の段階では暗闇を手探りで歩くような感覚で聴いていたのに、
スコア見ながらだと楽器同士の絡みの妙や、瞬間瞬間で湧き起ったり消えたりするダイナミクスの波や音楽的ゆらぎ、
そういった情報が少しずつでも入ってくるので
途端に視界が開けてきて、曲の全体像も靄がかかっていながらもうっすら見えてきます。
単刀直入に言って、僕この曲結構好きですし、音楽的内容もとても優れた作品だと思います。
それでいて、課題曲Ⅴとしてはかなりとっつきやすい部類なのではないでしょうか。
難易度もそこまで高いわけではないように思いますし、曲想も理解しやすいでしょう。
総合的に見て課題曲としてかなり理想的な曲だと思っています。
僕的には、練習番号Eからすごく楽しくなってきました。
Iからが特にいいですね。夢想してるようなちょっと不思議な雰囲気が何とも言えず、
本来の意味でエクスタシー状態になれるような錯覚を受けます。
最終盤に現れる、井澗昌樹もビックリの荒ぶるチューブラーベルは見もの(聴きもの?)
さすがにこういう曲は数回見ただけではまだまだ語れません。
時間をかけてしっかり楽しもうと思います。
ところでライナーノーツにもありましたが、
フェルマータの三角バージョンみたいなのと四角バージョンみたいなの。
一般的な半円のフェルマータもちゃんと出てきますが、
これら3つはどうやって使い分ければいいんだろ。
不勉強で恐縮です。
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プロフィール
HN:
根魚
年齢:
35
性別:
男性
誕生日:
1989/09/16
職業:
臨時職員
趣味:
作曲・編曲、釣り、ラーメン屋巡り
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